コンテンツにスキップ

8000メートル峰

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
8000メートル峰の位置

8000メートル峰(8000メートルほう、Eight-thousander)とは、地球上にある標高8000メートル26247フィート)を超える14座のの総称である。14座全てが広義のヒマラヤ山脈[1](北西のカラコルム山脈を含む)にある。登山の対象とされるが、世界最高峰であるエベレストを含む各山の頂上付近は、薄い酸素濃度、寒冷で悪化しやすい天候、峻険な地形により、登山者にとっては過酷なデスゾーンである[1]

概要

[編集]

人類が初めて登頂に成功した8000メートル峰はアンナプルナで、フランスモーリス・エルゾーグルイ・ラシュナルが1950年に山頂に達した。それから14年間のうちに他の8000メートル峰も全て初登頂された。

全14座のうち、8座では初登頂の際に酸素ボンベが使用された[2]。最高峰のエベレストから標高第5位のマカルーまではビッグ5と呼ばれ、現在でも頻繁に酸素ボンベが使われている[3][4]

全ての8000メートル峰の登頂に成功した最初の人物はラインホルト・メスナーイタリア)で、1986年10月16日に達成した。その一年後、イェジ・ククチカポーランド)が2人目の達成者となった。2022年時点では45人が達成している。日本人では竹内洋岳、次いで石川直樹が全14座登頂に成功している。

14座で最初に冬季登頂された山はエベレストで、1980年2月にポーランド隊の2人が頂上を制した。2020年を終えてもK2のみ冬季登頂が果たされていなかったが、2021年1月16日にネパールの登山隊が冬季初登頂に成功した。エベレストとK2以外の冬季初登頂は無酸素で達成されている[5]

8000メートル峰の一覧

[編集]
山名[6] 標高 所在地 初登頂
年月日
   初登頂者    冬季
初登頂
年月日
  冬季初登頂者[注釈 1]  登頂者*
(〜2011)
死亡者*
(〜2011)
死亡/登頂比*
(〜2011)
死亡/登頂比**
(〜1989)
死亡/登頂比**
(1990-2003)
エベレスト 8848 m 中国
ネパール
1953年
5月29日
エドモンド・ヒラリー
テンジン・ノルゲイ
イギリス隊)
1980年
2月17日
クシストフ・ヴィエリツキ
レシェック・チヒ
5656 223 3.9 % 37 % 4.4 %
K2 8611 m 中国
パキスタン[注釈 2]
1954年
7月31日
アキッレ・コンパニョーニ
リーノ・ラチェデッリ
イタリア隊)
2021年
1月16日
ニルマル・プルジャらネパールの登山家10人 306 81 26.5 % 41 % 19.7 %
カンチェンジュンガ 8586 m インド
ネパール
1955年
5月25日
ジョージ・バンド
ジョー・ブラウン
(イギリス隊)
1986年
1月11日
イェジ・ククチカ
クシストフ・ヴィエリツキ
283 40 14.1 % 21 % 22 %
ローツェ 8516 m 中国
ネパール
1956年
5月18日
フリッツ・ルフジンガー
エルンスト・ライス
スイス隊)
1988年
12月31日
クシストフ・ヴィエリツキ 461 13 2.8 % 14 % 2 %
マカルー 8463 m 中国
ネパール
1955年
5月15日
ジャン・クジー
リオネル・テレイ
フランス隊)
2009年
2月9日
シモーネ・モーロ
デニス・ウルブコ
361 31 8.6 % 16 % 8.5 %
チョ・オユー 8188 m 中国
ネパール
1954年
10月19日
ヨゼフ・ヨヒラー
パサン・ダワ・ラマ
ヘルベルト・ティッヒー
オーストリア隊)
1985年
2月12日
マチェイ・ベルベカ
マチェイ・パフリコスキ
3138 44 1.4 % 7 % 2 %
ダウラギリ 8167 m ネパール 1960年
5月13日
クルト・ディームベルガー
ペーター・ディーナー
ナワン・ドルジ
ニマ・ドルジ
エルンスト・フォラー
エルビン・シェルバート
(スイス隊)
1985年
1月21日
イェジ・ククチカ
アンジェイ・チョク
448 69 15.4 % 31 % 11 %
マナスル 8163 m ネパール 1956年
5月9日
今西壽雄
ギャルツェン・ノルブ
日本隊)
1984年
1月14日
マチェイ・ベルベカ
リシャルド・ガエフスキ
661 65 9.8 % 35.16 % 13.42 %
ナンガ・パルバット 8126 m パキスタン[注釈 2] 1953年
7月3日
ヘルマン・ブール
ドイツ・オーストリア隊)
2016年
2月26日
シモーネ・モーロ
アレックス・ティコン
アリ・サドパラ
335 68 20.3 % 77 % 5.5 %
アンナプルナ 8091 m ネパール 1950年
6月3日
モーリス・エルゾーグ
ルイ・ラシュナル
(フランス隊)
1987年
2月3日
イェジ・ククチカ
アルトゥール・ハイゼル
191 61 31.9 % 66 % 19.71 %
ガッシャーブルムI峰 8080 m 中国
パキスタン[注釈 2]
1958年
7月5日
アンドリュー・カウフマン
ピーター・シェーニング
アメリカ隊)
2012年
3月9日
アダム・ビエレツキ
ヤヌシュ・ゴロヴ
334 29 8.7 % 15.5 % 8.75 %
ブロード・ピーク 8051 m 中国
パキスタン[注釈 2]
1957年
6月9日
ヘルマン・ブール
クルト・ディームベルガー
マルクス・シュムック
フリッツ・ヴィンターシュテラー
(オーストリア隊)
2013年
3月5日
マチェイ・ベルベカ
アダム・ビエレツキ
トマス・コワルスキ
アルトウール・マレク
(ポーランド隊)
404 21 5.2 % 5 % 8.6 %
ガッシャーブルムII峰 8035 m 中国
パキスタン[注釈 2]
1956年
7月8日
ヨゼフ・ラルヒ
フリッツ・モラベック
ハンス・ヴィレンパルト
(オーストリア隊)
2011年
2月2日
シモーネ・モーロ
デニス・ウルブコ
コートニー・リチャーズ
930 21 2.3 % 7.8 % 0.44 %
シシャパンマ 8027 m 中国
(チベット)
1964年
5月2日
許競ら10人
(中国隊)
2005年
1月14日
ピオトル・モラフスキ
シモーネ・モーロ
302 25 8.3 % 2 % 16.8 %

* Eberhard Jurgalski of 8000ers.com;The Economist 2012年3月時点のデータ[7] (2011年度末まで)

** 2003年9月現在。出典:Chinese National Geography 2006.8, page 77.

全ての8000メートル峰の登頂に成功した人物一覧

[編集]
達成
順位
全山
無酸素
名前 達成年 国籍
1 1 ラインホルト・メスナー 1970-1986 イタリア
2 イェジ・ククチカ 1979-1987 ポーランド
3 2 エアハルト・ロレタン 1982-1995 スイス
4 カルロス・カルソリオ 1985-1996 メキシコ
5 クシストフ・ヴィエリツキ 1980-1996 ポーランド
6 3 フアニート・オヤルサバル 1985-1999 スペイン
7 セルジョ・マルティーニ 1976-2000 イタリア
8 朴英碩(パク・ヨンソク) 1993-2001 韓国
9 厳弘吉(オム・ホンギル) 1988-2001 韓国
10 4 アルベルト・イニュラテギ 1991-2002 スペイン
11 韓王龍(ハン・ワンヨン) 1994-2003 韓国
12 5 エド・ベスターズ 1989-2005 アメリカ
13 6 シルヴィオ・モンディネッリ 1993-2007 イタリア
14 7 イバン・バレーホ 1997-2008 エクアドル
15 8 デニス・ウルブコ 2000-2009 カザフスタン
16 ラルフ・ドゥイモビッツ 1990-2009 ドイツ
17 9 ベイカー・グスタフッソン 1993-2009 フィンランド
18 アンドリュー・ロック 1993-2009 オーストラリア
19 10 ジョアン・ガルシア 1993-2010 ポルトガル
20 ピョトル・プステルニク 1990-2010 ポーランド
21 エドゥルネ・パサバン 2001-2010 スペイン
22 アベーレ・ブランク 1992-2011 イタリア
23 ミンマ・ツェリン・シェルパ 2000-2011 ネパール
24 11 ゲルリンデ・カルテンブルンナー 1998-2011 オーストリア
25 ヴァシリー・ピフツォフ 2001-2011 カザフスタン
26 12 マクスト・ジュマイエフ 2001-2011 カザフスタン
27 キム・ジェスー 2000-2011 韓国
28 13 マリオ・パンツェリ 1988-2012 イタリア
29 竹内洋岳 1995-2012 日本
30 チャン・ダワ・シェルパ 2001-2013 ネパール
31 14 金昌浩(キム・チャンホ) 2005-2013 韓国
32 ホルヘ・エゴチャガ 2002-2014 スペイン
33 15 ラデック・ヤロス 1998-2014 チェコ
34/35 16/17 ニベス・メロイ 1998-2017 イタリア
ロマーノ・ベネット 1998-2017 イタリア/スロベニア
36 ピーター・ハモール 1998-2017 スロバキア
37 18 アジム・ガイチェサズ 2008-2017 イラン
38 フェラン・ラトーレ 1999-2017 スペイン
39 19 オスカル・カディアチ 1984-2017 スペイン
40 金未坤(キム・ミゴン) 2000-2018 韓国
41 サヌ・シェルパ 2006-2019 ネパール
42 ニルマル・プルジャ 2014-2019 ネパール
43 ミンマ・シェルパ 2010-2019 ネパール
44 キム・ホンビン 2006-2021 韓国
石川直樹 2001-2024 日本

・ニベス・メロイ、ロマーノ・ベネットの二人は同時に達成

論争中の人物

[編集]

頂上に到達した十分な証拠が無いため論争が起きている。

  名前 (論争が起きている山) 達成年 国籍
1 ファウスト・デ・ステーファニ (ローツェ 1997) 1983-1998 イタリア
2 アラン・ヒンクス (チョ・オユー 1990) 1987-2005 イギリス
3 ウラディスラフ・テルジュール (シシャパンマ 2000) 1993-2004 (14座目で下山中死亡) ウクライナ
4 呉銀善 (カンチェンジュンガ 2009) 1997-2010 韓国
5 カルロス・パウナー (シシャパンマ 2012) 2001-2013 スペイン

画像

[編集]

日本人8000メートル峰登頂状況

[編集]
登頂数 氏名 生年月日
没年月日
年齢 エベレスト
8848 m
K2
8611 m
カンチェンジュンガ
8586 m
ローツェ
8516 m
マカルー
8463 m
チョ・オユー
8188 m
ダウラギリ
8167 m
マナスル
8163 m
ナンガパルバット
8126 m
アンナプルナ
8091 m
ガッシャーブルムI峰
8080 m
ブロードピーク
8051 m
ガッシャーブルムII峰
8035 m
シシャパンマ
8027 m
14 竹内洋岳 1971/1/8
-
53 1996/5/17 1996/8/14 2006/5/14* 2009/5/20* 1995/5/22 2011/9/30* 2012/5/26* 2007/5/19* 2001/6/30* 2004/5/28* 2004/7/25* 2008/7/31* 2008/7/8* 2005/5/7*
14 石川直樹 1977/6/30

-

45 2001/5/23

2011/5/20

2022/7/22 2022/5/7 2013/5/17 2014/5/25 2023/10/2 2022/4/9 2012/9/30

2022/9/28

2023/7/2 2023/4/15 2023/7/26 2022/7/29 2019/7/25 2024/10/4
13 渡邊直子 1981/10/27
-
43 2013 2018 2019/5 2022/5/13 2014 2006 2021/10/01 2019/9/26 2022/7/2 2019/4 2022/8/12 2022/7/27 2022/7/21
9 山田昇 1950/2/9
1989/2/24
故人 1983/12/16* 1985/7/24* 1981/5/9 1982/10/18 1988/11/6 1978/10/21 1985/12/14* 1987/12/20 1988/10/24*
9 名塚秀二 1956/11/19
2004/10/10
故人 1985/10/30 1990/8/9 1991/5/24 1993/10/8 2001/10/11 1997/7/7 2000/7/29 1997/7/14 1999/10/29
9 田辺治 1961/1/4
2010/9/28
故人 1993/12/20 1997/7/19 1995/5/21 1993/10/11 2005/7/16 2002/8/5 1993/8/24 1990/7/26 2006/10/9
9 近藤和美 1941/11/22
-
82 1998/5/22 2011/5/20 1992/9/20* 1995/10/6* 2009/5/19 1999/7/29* 2003/8/1* 2000/7/30* 2010/5/17
8 加藤慶信 1976
2008/10/1
故人 2005/5/24 2002/10/3 2006/5/3 1997/10/8 2003/5/16 2001/8/13 2001/7/10 2006/5/18
8 谷川太郎 1967/6/27
-
57 2003/5/22 1996/8/12 1998/5/15 2003/5/10 1995/5/22 1999/9/28 1991/7/12 1993/7/22
7 山本篤 1962/10/7
-
62 1989/10/13 1996/8/14 1995/5/21 1988/11/6 1997/8/10 2003/5/16 1988/10/24
7 北村俊之 1962
-
62 1999/10/1* 1997/5/31* 2013/10/2 1998/8/6 1997/7/16* 1995/7/20* 2014/7/26
7 尾崎隆 1952/9/9
2011/5/12
故人 1980/5/10 1984/5/19 1983/10/9 2001/5/12 1981/10/12 1977/8/8 1986
6 宮崎勉 1947/11/11
-
76 2002/5/17 1983/10/10 1993/10/12 1978/10/19 1997/7/14 1997/7/9
6 後藤文明 1965/5/10
-
59 1993/12/18 1993/10/8 2002/8/5 1997/7/20 1997/7/8 1999/10/29
6 三谷統一郎 1956
-
68 1989/10/13 1984/5/20 2002/10/3 1985/10/3 1982/10/17 1997/10/8
6 高橋和弘 1974
-
50 1996/8/14 2002/10/3 1997/10/8 2003/5/16 2001/7/10 2001/8/13
6 天野和明 1977/2/23
-
47 2002/10/8* 2006/5/3* 2003/5/16* 2001/8/13* 2001/7/10* 2006/5/18*
6 平出和也 1979/5/25
-
45 2011/5/26 2017/5/26 2001/9/24* 2009/7/26 2008/7/31 2008/7/8

* 無酸素登頂

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 登山においては世界的に冬至から春分までを冬季としている。例えば、山と渓谷2012年3月号、2014年2月号。
  2. ^ a b c d e 注意:これらの山はカシミール地方にある。この地域はインドも領有を主張している。

出典

[編集]
  1. ^ a b 14座制覇王手 看護師の夢「稼ぎつぎこみ」「明日死んでもいいように生きる」偉業は通過点…子どもに夢を東京新聞』夕刊2023年3月30日1面(同日閲覧)
  2. ^ 8000ers.com General Info。初登頂の際に酸素ボンベが使用された山はエベレストからマカルーまでの標高上位5座と、マナスルガッシャーブルムI峰シシャパンマ。シシャパンマでは10人の登頂者が少数の酸素ボンベを交代で使った(深田久弥『ヒマラヤ登攀史』)。
  3. ^ 山野井泰史『垂直の記憶』山と渓谷社、2004年。ISBN 4635140059 
  4. ^ 塩野米松『初代竹内洋岳に聞く』アートオフィスプリズム、2010年。ISBN 4904659015 
  5. ^ Winter Climbing | The Bitter Cold and Wind, History, The Calendar Winter and More (Part-2/2) ExplorersWeb(2014年1月20日)
  6. ^ Geographical facts and first ascents information of the Main 8000ers http://www.8000ers.com/cms/en/8000ers-mainmenu-205.html
  7. ^ “Stairway to heaven”. The Economist. (May 29, 2013). http://www.economist.com/blogs/graphicdetail/2013/05/daily-chart-18 2013年5月30日閲覧。 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]
pFad - Phonifier reborn

Pfad - The Proxy pFad of © 2024 Garber Painting. All rights reserved.

Note: This service is not intended for secure transactions such as banking, social media, email, or purchasing. Use at your own risk. We assume no liability whatsoever for broken pages.


Alternative Proxies:

Alternative Proxy

pFad Proxy

pFad v3 Proxy

pFad v4 Proxy