カメラに強い視線を向ける與。「悩んでいても絶対に分かってくれる人がいることを伝えていきたい」と誓った=東京・中目黒
ギャラリーページで見る男女ユニット、AAAのメンバーでソロアーティストとしても活躍中の與真司郎(36)。今年デビュー20周年を迎え、自身の半生をつづったフォトエッセー「人生そんなもん」(講談社、税込み1980円)を16日に発売する。地道に努力を重ね、国民的グループの一員として不動の地位を得た一昨年7月、同性愛者であることを公表。周囲に流されることなく自分らしく生きる注目株は〝今〟を楽しんでいる。(ペン・納村悦子、カメラ・土谷創造)
涙のカミングアウトから1年9カ月。ハスキーボイスの関西弁と自然体の笑顔で「何でも聞いてください」と語る。與をまとうオーラは充実感で満ちあふれていた。
その多幸感漂う表情から想像もつかない葛藤や苦悩をつづったのが「人生そんなもん」だ。同性愛者であることを公表するまでの道のりと、その後の心境を告白。幼少期に覚えた違和感や誰にも言えない悩みを抱え、孤独感を味わった日々などを赤裸々に記した。
「僕は性格上、隠すことが嫌い。何も悪いことはしていないんですよ。本を読んでもらって本当の自分を知ってもらいたかった」と発売に至った経緯を説明。19日から全国4都市で記念イベントも決まり「トラウマやコンプレックスを持った人、みんな悩みは絶対あるし、そういう人たちが読んで『こんな人生もあるんや。自分も頑張ろう』って思ってもらえたら書いた意義がある」と力を込めた。
小学5年生でダンスに目覚め、14歳だった2003年、エイベックス主催のオーディションで合格。05年9月にAAAとしてデビューした。10年から7年連続でNHK紅白歌合戦に出場するなど着実に階段を上っていたが、性的指向を隠していたため、ラブソングが理解できなかったり、恋愛の質問を噓で返すなど人知れず悩みもあった。
「小さい時はダンス、AAAではメンバーと頑張っていきたかったから仕事やキャリアにフォーカスするしかなかった。ストレスをためないように自分が好きなことに多くの時間を当てていました」と振り返る。
人気絶頂の16年、新しい人生を見いだすべく米ロサンゼルスへの留学と移住を決意。だが、拠点を移して1、2年は苦悩の日々が続いた。「言葉もカルチャーも分からないし、米国にいても孤独を感じた。ゲイの集まるコミュニティーに自分のことを知る日本人がいるかもしれない恐怖。他のメンバーはソロで活躍している。終わったと思った」と苦笑する。