自分たちの地域のために住民が活動する町内会が大きな岐路に立たされています。

県内には、4400を超える町内会や自治会がありますが、年度変わりの今はまさに総会が開かれる時期です。

そうした中、異例の方法で存続を目指す町内会がありました。

富山県富山市で桜が満開となった今月6日。

堀川地区センターに住民が集まりました。

*小林仁さん
「きょうは皆さん花見も行かず総会に来ていただいてありがとうございます。町内会合併です。新しい町内として進めていく」

富山市の「小泉町東部」と「堀川小泉町1丁目」、2つの町内会が合併して誕生した「堀川小泉町町内会」の初めての総会です。

堀川小泉町町内会が位置するのは旧富山市の南部、堀川小学校校下にある住宅地です。

合併した2つの町内会。

会員世帯数は、堀川小泉町1丁目が273、小泉町東部が22でした。

*旧小泉町東部町内会長 久保田信博さん
「20数世帯ですが実際には施設に入っている方、老齢の方も増えて(町内会の)役員ができるのは片手(の数)もいない。本当にほっとした。長年の懸案がやっと片付いた」

町内会合併に踏み切った最大の理由は高齢化による役員のなり手不足でした。

この難局を乗り切ろうと、旧小泉町東部の久保田信博さんと旧堀川小泉町1丁目の小林仁さん、2人の町内会長を中心に合併に向けた協議が進められました。

協議は、回覧板の配布方法から役員選出のローテーション、新しい町内会の名前まで多岐に渡り、およそ2年の月日がかかりました。

*小林仁さん
「公民館、公園管理、衛生委員をまとめた。できるだけ役員の数を増やしたくない。兼務できるところは兼務していければいい」

役員の数を増やさないようにしたとはいえ町内会長以下、防犯交通安全委員に児童クラブ委員、宮委員に班長まで…新しい役員は、総勢38人にのぼりました。

堀川小泉町1丁目に班を追加する形で合併した小泉町東部の久保田さんも役員を続けます。

*久保田信博さん
「切り替わり目は、よく知っている人がいい。もう1年間、班長をやらせていただくので改めてよろしくお願いします」

*Q.合併して1班増えたことについて
*旧役員
「いいと思う。子どもが小学生なので、児童会が盛り上がるかなと思う」

*新会長
「(目指すのは)何でも言い合える町内。誰かがどこかでウジウジしているのではなくさらけ出して、それを町内として解決できれば強いと思う」

*小林仁さん
「もう次の人に渡したので自分たちの発想力でやればいい。障害になる課題は(会長の任期)2年間で無くしたつもり」

単独で運営を断念する町内会。

背景に、役員のなり手不足があることがわかりました。

こちらは、富山市が1年前に公表した町内会長へのアンケート調査の結果です。

「町内会の活動を行っていく上での課題」として、「活動内容が慣例化」に次いで多いのが、「役員のなり手不足」「役員が高齢化」で、8割を超えました。

こうした中で、ついに合併の道を選択する町内会が出始めたと…

県内の各市町村に聞いたところおよそ4400の町内会の中でも合併したケースはほとんどありません。

ただ、合併するにはどうしたらいいか、相談を受けるケースはあるそうで、運営に苦慮している町内会は存在します。

そうした中、合併を実現した先駆的なケースが堀川小泉町です。

そのキーマンに聞きました。

今回、取材した小林仁さん(54)です。

銭湯や造園業を営む傍ら、一昨年度、昨年度の2年間、旧堀川小泉町1丁目町内会の会長を務めました。

*小林仁さん
「そことかに(ごみを)置いてネットを掛けていた。その鉄骨が名残り。ネットを引っ掛けていた(道路にごみ置き場がはみ出していた)」

隣接する小泉町東部との町内会合併のきっかけになったのが、互いの住民が共同で利用するごみステージョンの設置です。

3年前に竣工した堀川小学校の改築工事に合わせ、市に掛け合って学校の敷地の端に置かせてもらえるようになりました。

小林さんは、当時町内会の役員ではありませんでしたが、前回、10年前に引き受けた町内会長の経験をもとに市と交渉を進めたといいます。

*小林仁さん
「交通安全上、学校にも協力してもらえないか(交渉して)ここまでしていただいた」

交渉を一緒に進める過程で隣の町内会の実情を知りました。

他人事とは思えませんでした。

*小林仁さん
「ごみはうちと一緒にやっているからいいけど、一緒になることによって隣の町内会の負担も減らせるんじゃないかと思った。人口は増えないので、地域が縮小する中でも(町内会を)活用していけないか」

人口が減り続ける中、地域住民で町内会の運営をどう持続可能なものにしていくか…いま、町内会が大きな岐路に立っています。

*小林仁さん
「いかに町内の仕事を減らしていくか。仕事量は減らないとしたら合併によってみんなの負担が減っていく。将来的にいいのではないか」

狙いは、限られた人員で持続可能な町内会をつくると…

合併はその切り札の一つなんですが、取材しまして、実際に進めるにはかなりハードルが高いと感じました。

これは、小林さんが会長を務めていた旧町内会の役員のローテーションです。

2つか3つの班から2年ごとに役員を選出することになっていて、3班の小林さんは10年前の2015年度から2年間、町内会長をやり、その後堀川小学校の敷地にごみステーションを設置した経験を踏まえて、次のローテーションで3班が回ってきた2023年度からはまさに合併を進めるために再度町内会長を引き受けたということです。

小林さんのリーダーシップが合併実現の最大の要因と…。

はい、一般的には1年2年の役員の任期を何とかこなすというのが多くの町内会の実情だと思いますので、町内会合併のような大きな改革はなかなか難しいと思います。

ただ、そこまで大きな改革でなくても、町内会の仕事の効率化は必要だと専門家は指摘します。

*放送大学教養学部 玉野和志教授
「無理のない形で町内会が代表してきた地域の総意、行政との関係を生かしながら細々と持続しながらも、何かあったときには住民のために動くことができる。行政も地域の人たちに信頼される仕組みをつくり直す時期に来ている。」

持続可能な町内会運営を模索する動きを今後も取材していきます。

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