ジャンプで異彩 落語漫画・あかね噺の粋 バトルの王道×噺家の芸道
令和を代表する落語入門書になるかもしれない。
週刊少年ジャンプで連載が始まり、この2月で2年となる落語漫画「あかね噺(ばなし)」。真打(しんうち)をめざす女性噺家(はなしか)が主人公のエンタメ漫画は、芸の深みにも迫る。異色の本格落語漫画はどう生み出されたのか。原作の末永裕樹さん(33)と、作画の馬上鷹将(もうえたかまさ)さん(33)にインタビューした。
末永さんに「あかね噺」の特徴をたずねると、こう言った。
「落語漫画といえば、『師弟』。疑似家族的な関係を描く大人の人情ドラマのイメージが強かった。でも『あかね噺』はあくまで演技論を中心としたバトル漫画です。なんと言っても、少年ジャンプの連載ですから」
物語のヒロインは、真打昇進試験に失敗し、破門された父の芸のすごさを認めさせようと、噺家になる阿良川あかね(本名・桜咲朱音(おうさきあかね))。高校生のころは学生落語選手権大会「可楽杯」、入門後は二ツ目昇進への足がかりとなる「前座錬成会」など、節目節目でコンテストに出場する。多彩なライバルたちとの対決で読者をワクワクさせる手法は、ジャンプ漫画の王道。競い合いながら、あかねは自らとも向き合い、技量を高めていく。
もっとも作品化のきっかけは、末永さんが落語に距離を感じていたことにあった。「女子高生のキャラクターが先にあって、一番やらなそうなものはと考えた時に出てきたのが、落語だったんです」。M―1グランプリをはじめとするお笑いが好きな末永さんにとって、関心はあってもどこか遠いものだった落語の世界。だからこそ、女子高生とのギャップの面白さから題材に選んだという。
連載構想は2021年秋に持ち上がり、翌年2月からスタート。少年漫画として楽しんでもらうだけでなく、めざしているのは「本職の落語家の方が読んでも面白く、一般の方にも落語ってこういうものなんだって伝わる作品」。ジャンプファンでもある落語監修者で二ツ目の若手噺家・林家けい木さん(32)らの橋渡しで、蝶花楼桃花さんや桂宮治さんをはじめ、計20人以上の噺家たちへの取材を重ねてきた。
実際に噺家と向き合った、率直な印象を末永さんはこう振り返る。
「人間として強い生き物だな、と。まず言葉のエネルギー量がすごい。そして自分の軸をしっかりと持っている。それがないとやっていけない世界なんだ、と感じました」
鋭い目で威厳をたたえるゲームのラスボスのような阿良川一生、19歳で二ツ目に昇進したキラキラとした阿良川魅生(かいせい)、お客の笑顔を見たくて営業マンを辞めた阿良川嘉一、人気声優でありながらあかねに勝つために噺家になった負けず嫌いの阿良川ひかる……。どこか実在する芸人もほうふつとさせるような、強烈な個性を持ったキャラクターが登場する「あかね噺」の世界。作画を手がける馬上さんは、この連載である手法を編み出したという。
「実は連載が決まってから初めて生で落語を見たんですけど、すごく想像力をかき立てられました。いつの間にか引き込まれていたんです。その感覚を読者にも味わってもらえたら」
ジャンプ漫画で異彩を放つ理由
落語の世界にいつの間にか引き込まれていた…驚きの体験をした馬上さんが凝らす作画の工夫とは。後半は、ジャンプ漫画で異彩を放つあかね噺の魅力にも迫ります。
落語の漫画だけに「芝浜」「…
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