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T-62は、基本的に[[T-55]]を発展させた型である。車体が若干大きくなり、重量の配分が変わったため転輪のピッチが異なる。[[T-54/55]]は第1転輪と第2転輪の間が広いが、T-62は第3・第4転輪の間と第4・第5転輪の間が広く取られている。砲塔はT-54/55のものをさらに洗練した鋳造製で、傾斜の小さい下部ほど厚みがあり、上にいくに従って薄くなる構造である。T-54/55とは異なり、上面も含めた一体鋳造になっている。
 
最大の特徴は[[主砲]]にAPFSDSの運用に適した[[滑腔砲]]([[ライフリング]]を施していない砲)を採用した事である。この砲の[[装甲]]貫徹力は大きかったが、[[ソ連地上軍|ソ連陸軍]]の[[第二次世界大戦]]における[[機甲戦|戦車戦]]の分析に従い、長距離での戦闘を重視しなかった。このような設計思想であったため、単純な距離計測能力しか持たない([[照準器]]の接眼レンズ内に距離測定用の目盛りを持つのみ)照準器により、射程1,500メートルを越えると命中率が急激に低下するのが弱点であった。これはのちに[[光波測距儀|レーザー測遠器]]を搭載するなどして改善された。主砲は「メテオール」砲安定装置によって2軸で安定化されおり、照準器も砲安定装置との機械的なリンクにより安定化されている。米軍が実施したテストでは、時速20kmで行進間射撃を行う場合、T-62は1000メートルの移動目標に対して70%の初弾命中率を示した。これにより、この戦車は動的な戦場や突破作戦、特に戦車戦のほとんどが1,500メートル以内で行われる中央ヨーロッパで大きな利点を得ることができた
 
敵による発見を防ぎ、また、被弾率を低くするため全高を低くするという[[ソビエト連邦|ソ連]][[戦車]]の設計思想がよく現れている。それによって乗員の居住性が犠牲となり、砲身の俯角がほとんど取れないという欠点が生じている。(俯仰角は-6°から+16°)
 
[[砲弾]]の装填は装填手が手動で行い、射撃後の空[[薬莢]]を邪魔にならないよう[[砲塔]]後部の小ハッチから自動的に排出する機構(自動排莢装置)を持つ。発撃速度の向上大いに貢献するとされていたが、排莢時砲身の仰角を最大3.5度しなけ砲が固定される。こば機構が作動しないため、排莢後にはそのつど砲身角装填速を戻さねば向上だけでらずかといって排莢作業を手動で行うには砲塔内容積の余裕有害さが装填手燃焼ガス作業に悪影響を与え、砲塔狭さは装填作業にも多大な影響充満与えたため、かえって射撃速度が低下する結防ぐ効となもあった。また、射撃後NBC兵器砲身角度を一定に保てよる汚染が警戒される場合い事どでは、同一目標への連続射撃を大い任意阻害することになった。[[自動装填装置]]を持つ他の戦車でも射撃後の排莢・装填時には砲身規定角度に戻停止必要があが、現代の戦車では自動的に元の位置に素早く復旧されるのに対し、T-62では砲安定装置の機能がそまで進んでいなかった。また、空薬莢の排出ハッチが作動して開く砲塔部に開口部がも可能ことになり、[[規制が議論されている兵器|NBC兵器]]で汚染された状況下では運用に難があった。砲塔内部にはT-55と同様にNBC防御用PAZシステムを装備し、設置場所はT-55の砲塔右前方から、砲塔後部の排莢ハッチ下へ変更された。
 
なお、T-62は標準で潜水渡渉能力を持ち、[[シュノーケル (潜水艦)|シュノーケル]]を装備すると共に機関室上面の開口部を塞ぐための水密扉が装備されている。自動排莢機構が投棄する薬莢により、機関室上面の水密扉が損傷することを防ぐため、格納状態の水密扉にはこれを覆う形で防護板が備えられている。
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== 運用 ==
[[ファイル:T-62 medium tank front-left 2016 Military Museum Beijing.jpg|thumb|250px|[[中国人民革命軍事博物館]]で展示されるT-62]]
[[ファイル:Destroyed Iraqi T-62.jpg|thumb|250px|[[73イースティングの戦い]]で撃破されたT-62]]
 
初実戦は[[1968年]]の[[ソ連によるチェコスロヴァキアへの軍事侵攻|ドナウ作戦]]であり、T-55や[[T-10 (戦車)|T-10]][[重戦車]]等と共にチェコスロバキア軍や[[プラハ]]市民の制圧に従事した{{Sfn|後藤|2023}}。その翌年に発生した[[中ソ国境紛争]]で3両のT-62が投入されたが、[[中国人民解放軍|中国軍]]側が設置した対戦車地雷や[[RPG-2|56式火箭筒]]による対戦車攻撃等で全車両が行動不能となり、その場で放棄された{{Sfn|後藤|2023}}。その内の1輌が中国側に[[鹵獲]]され、[[69式戦車]]の開発に役立てられているたほか<ref>Zaloga, Steven J. (2009). T-62 Main Battle Tank 1965–2005. NVG 158. Illustrated by Tony Bryan. Osprey Publishing. p.32</ref>、[[プロパガンダ]]のために[[北京市|北京]]で展示された
 
T-62は、[[ワルシャワ条約機構]]内ではブルガリアを除いたほとんどの国家で採用されず、[[チェコスロバキア]]や[[ポーランド]]での[[ライセンス生産]]も行われなかった{{Sfn|後藤|2022}}。一方で[[エジプト]]や[[シリア]]等の[[中東]]・[[アフリカ]]諸国や親ソ国家で採用され、[[第四次中東戦争]]などで用いられたが、本来の想定戦場である[[ヨーロッパ]]の大平原と異なり、[[中東]]の複雑な地形では前述の遠距離射撃性能の悪さや俯角の取れない点などで戦果は芳しくなかった。戦争を通じ[[イスラエル国防軍]]に多数が鹵獲され'''[[チラン (戦車)|Tiran-6]]'''として戦力化されているが、中距離までなら威力と精度が必要充分として、同様に鹵獲された[[T-55]]で行われた[[主砲]]換装などの凝った改造までは施されていない。
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[[朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮]]では「天馬号/天馬虎」の名でライセンス生産されており、「[[M-2002|暴風号/暴風虎]]」および「[[M-2002#先軍号|先軍号]]」の基にもなっている。
 
[[イラク]]では[[共和国防衛隊]]で運用されていたが[[湾岸戦争]]でアメリカ軍のM1A1に敗北した。
 
本来、[[T-54/55]]を代換すべきT-64の開発・実用化と量産がはかどらなかったため、T-62は予定以上に生産、[[T-72]]が開発・配備された後も近代化改修が施され長らく使用されたが、[[冷戦]]終結後の軍縮により退役しスクラップになった車両も相当な数に上っている。たとえば[[南オセチア紛争]]で使用された際には、敵に撃破されるものよりはるかに多くの故障による損失を出しロシア兵を悩ませたという。
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[[2022年]]2月に勃発したロシアによる[[2022年ロシアのウクライナ侵攻|ウクライナ侵攻]]の際には、開戦から間もなくしてロシア軍で運用する戦車の消耗が激化したため、3月末の時点で予備兵器として保管されていたT-62Mの再導入が試みられた<ref>{{Cite web |url= https://en.defence-ua.com/weapon_and_tech/t_62m_tanks_from_khrushchev_era_can_kremlin_deploy_these_antique_tanks_in_ukraine_and_why-2399.html|title= T-62M Tanks from Khrushchev Era: Can Kremlin Deploy These Antique Tanks in Ukraine and Why |publisher= Defence Express|date= 2022-03-29|accessdate=2022-05-25}}</ref><ref name="de2">{{Cite web |url= https://en.defence-ua.com/weapon_and_tech/russia_to_prepare_soviet_era_t_62m_tanks_to_replenish_reserves-3033.html|title= Russia to Prepare Soviet Era T-62M Tanks to Replenish Reserves |publisher= Defence Express|date= 2022-05-23|accessdate=2022-05-25}}
</ref>。T-62Mは1ヶ月ほど掛けて整備が行われ、5月末頃には復帰したT-62Mから編成される[[大隊戦術群]]がロシア領内に配置されたとみられている<ref name="de2"/>。また、光学サイトの代わりに新しいサーマルサイトを装備した近代化モデルも目撃されている。
一方で、あまりにも旧式であるためウクライナ軍陣地への突撃を行う運用は避け、自走式の榴弾砲として後方で運用する事例も見られた<ref>{{Cite web |url=https://forbesjapan.com/articles/detail/67456 |title=60年前のロシア軍戦車、ドニプロ川の橋頭堡攻撃試み撃破される? |publisher=Forbes |date=2023-11-21 |accessdate=2023-11-21}}</ref>。
 
== バリエーション ==
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:MK型のうちV-46-5Mディーゼルエンジンを搭載した型。
;T-62MV
:砲塔及び車体に増加装甲ではなく[[爆発反応装甲|爆発反応装甲(ERA)]]を装着したタイプ<ref>{{Cite web |和書|url=https://forbesjapan.com/articles/detail/51501 |title=ロシア軍、引っ張り出してきた旧式戦車「T-62」をほぼ無傷で戦場に放置 |publisher=Forbes |date=2022-10-13 |accessdate=2023-05-15}}</ref>。
;T-62MV-1
:T-62M-1と同様、エンジンをV-46-5Mディーゼルエンジンに換装した型。
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;BMPT-62<ref name="PANZER2月号">「戦後の異形戦車」宮永忠将、藤原純佳 『PANZER』2022年2月号 アルゴノート社 P38~P54</ref>
:[[アルジェリア]]がT-62を[[BMP-T|戦車支援戦闘車]]に改造した車両。余剰となったT-62から砲塔を撤去し、[[BMP-2|BMP-2M]]と同型のベレジョーク砲塔モジュールを新たに搭載している<ref name="PANZER2月号"/>。ウクライナ軍もロシア軍から鹵獲したT-62と損傷したBMP-2を使用して同様の改造を行っているとされる<ref>「[https://www.youtube.com/watch?v=TwX3pc2fYs0 ロシア軍から鹵獲したT-62戦車は古すぎて使い物にならないのでウクライナはこれを魔改造します]」ミリタリーチャンネル「ミリレポ」(2023年05月19日). 2023年6月4日閲覧。</ref>。
 
=== イスラエル ===
;Tiran-6
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:後に南米などに転売され、レーザー[[レンジファインダー|測距儀]]と[[砲手]]用の赤外線式[[暗視装置]]を搭載し、車体前面と砲塔の前面と側面に[[爆発反応装甲]]を取り付け、エンジンを[[アメリカ合衆国|アメリカ]]、[[ゼネラルモーターズ]]社製の[[ディーゼルエンジン]]に換装している。
:{{main|チラン (戦車)}}
 
=== ウクライナ ===
;T-62AG
:[[2000年代]]に[[O・O・モローゾウ記念ハルキウ機械製造設計局]]が開発した輸出用の近代化改修型。主砲を国産の{{仮リンク|KBA-3|uk|КБА3}} 125mm滑腔砲またはKBM-2 120㎜滑腔砲に換装し、エンジンとして5DTF(700馬力)を搭載している{{Sfn|後藤|2023}}。また対空機銃をDShKMから[[NSV重機関銃#派生型|NSVT]]に更新しており、車体と砲塔に国産の[[ニージュ]]爆発反応装甲を装着している{{Sfn|後藤|2023}}。
 
=== 北朝鮮 ===
;天馬号(チョンマホ)
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:北朝鮮は[[2013年]]の時点で約4,000輌の[[戦車]]を保有しており、その中核をT-62系列が占めていると見られている。現在は天馬号の新規生産はほとんど無く、既存車輌のアップデートを行っていると考えられている。いずれにしても、シリーズを通じて基本的には転輪は5個、主砲は115 mm滑腔砲、赤外線投光器によるアクティブ[[暗視装置]]、というT-62オリジナルのままの構成であると思われる。T-62の輸入/ライセンス生産型である天馬虎1号を元に、以後北朝鮮独自の改良が進められた。
:{{main|{{仮リンク|天馬号|en|Ch%27onma-ho}}}}
 
:;天馬虎1号
::ソ連から輸入されたT-62並びにT-62のライセンス生産型。ソ連から輸入されたT-62Mは天馬虎1号M/天馬1号Mと呼称されている。北朝鮮独自の仕様として、対空[[機関銃]]は[[KPV 重機関銃|KPVT 14.5 mm機関銃]]に強化されている。
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;;天馬虎5号
;:[[2010年]]と[[2012年]]の軍事パレードに登場した最新型で、天馬虎3号の防御力向上改良型。サイドスカートの前半分に爆発反応装甲を装備。砲塔は天馬虎4号とは異なり椀型の鋳造砲塔だが、前面に暴風号/暴風虎に似た楔形の付加装甲を装備し、5連装[[発煙弾発射機]]2基を装備している。車体前面にも付加装甲を装着し、砲塔前面下部と車体前面下部にはゴムスカートが装備されている。また、[[無限軌道|履帯]]にはゴムパッドを装備している。
;[[M-2002|暴風号I/暴風虎I(ポップンホI)]]
 
;[[M-2002|暴風号I/暴風虎I(ポップンホI)]]
:北朝鮮がT-62(天馬号/天馬虎)を基に大幅な改造を施して開発したとされる新型戦車。アメリカ国防総省によるコードネームは“M-2002”。改良型とされる新型戦車先軍号/先軍虎(ソングンホ)。
:;先軍号/先軍虎(ソングンホ)
::暴風号/暴風虎の改良型とされる新型戦車。
:{{main|M-2002}}
 
=== ブルガリア ===
;TV-62
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== 運用国 ==
[[ファイル:T-62 operators.png|300px|thumb|T-62 運用国<br />青が2022年現在の運用国 赤がかつて運用していた国]]
 
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* {{ALG}}
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* {{SYR}}
* {{SUD}}
* {{TJK}} - 2023年時点で、[[タジキスタン陸軍]]が7両のT-62/T-62AV/T-62AMを保有している<ref>{{Cite book|洋書 |title=The Military Balance 2023 |date=2023-02-15 |publisher=Routledge |page=198 |author=The International Institute for Strategic Studies (IISS) |isbn=978-1-032-50895-5 |language=英語}}</ref>。
* {{UZB}}
* {{UZB}} - 2023年時点で、[[ウズベキスタン陸軍]]が170両のT-62を保有している<ref>{{Cite book|洋書 |title=The Military Balance 2023 |date=2023-02-15 |publisher=Routledge |page=205 |author=The International Institute for Strategic Studies (IISS) |isbn=978-1-032-50895-5 |language=英語}}</ref>。
* {{VIE}}
* {{YEM}}
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'''(; 退役国)'''
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* {{AFG}}
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* {{SSR}}
* {{TCD}}{{Efn|リビア軍のものを鹵獲}}
* {{TJK}}
* {{TKM}}
* {{UKR}}
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'''; (研究目的で運用) '''
* {{USA}} - 第四次中東戦争後にイスラエルとエジプトから入手{{Sfn|後藤|2023}}。
* {{PRC}} - 中ソ国境紛争で鹵獲した車両を研究用として運用した。
{{div col end}}
 
'''; (不採用) '''
* {{CSK}} - 導入を検討していたが、単体コストの問題等で採用せず{{Sfn|後藤|2023}}。
{{div col end}}
317 ⟶ 321行目:
{{Normdaten}}
{{デフォルトソート:T-062}}
[[Category:T-62|*]]
[[Category:ソ連の戦車]]
[[Category:ウクライナの戦車]]
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